マーケットメーカーとオプション・スプレッド気配の仕組み¶
Why: Saxo multileg quoteが市場オープン直後にbid=マイナスとなる現象の背景理解。AEGISのエントリー判定(BROKER_NET_CREDIT_NON_POSITIVE)が正常動作であることの根拠。
マーケットメーカー(MM)= 八百屋の店主¶
株やオプションの世界には「いつでも売り買いの値段を出す」役割の人たちがいる。八百屋が店頭に「りんご 100円」と札を出すように、MMは「このオプション、買値○○ドル・売値○○ドル」と常に札を出す義務がある。見返りに注文フローの優先権や手数料割引を得る。
朝の開店準備 — Indicative vs Firm¶
八百屋も朝一番は準備中。築地から仕入れた相場がまだ見えていない段階で「今日のりんごいくら?」と聞かれても、とりあえず適当な値段を出すしかない。これが Indicative(参考値)。
9:30 ET 市場オープン
MM「まだ株価も安定してないし…
とりあえず超広い値段出しとくか」
→ bid = -1.55(実質「今は買いたくない」という意思表示)
10:00 ET 株価が落ち着いてくる
MM「よし、今日のボラティリティ見えてきた。
ちゃんとした値段出すか」
→ bid = 0.85(本気の値段 = Firm)
| 時間 (ET) | 状態 | multileg bid |
|---|---|---|
| 9:30-9:45 | Opening rotation・個別leg安定化中 | 大半マイナス or 極小値 |
| 9:45-10:00 | composite quote改善中 | 正の値だが実勢より低い |
| 10:00-10:30 | Firm quoteに移行 | 実勢に近い値 |
| 10:30-15:30 | 通常取引時間 | 最もタイトなスプレッド |
| 15:30-16:00 | クロージング | 再びスプレッド拡大 |
なぜスプレッド(2本組)だと余計に遅いのか¶
オプション1本なら値段を出すのは簡単。でもクレジットスプレッドは 「\(45Pを売って\)42Pを買う」という2本セット。
八百屋で言えば「りんご1個売るから、みかん1個くれ」という物々交換。りんごの値段もみかんの値段もまだ不安定な朝に、セットの値段なんてもっと出しにくい。
米国オプション取引所(CBOE, ISE, PHLX等)にはスプレッド専用の Complex Order Book (COB) がある。ここにMMや機関投資家がスプレッド単位で注文を入れる。しかしオープン直後はCOBにまだ注文が少ない — MMはまず個別legを安定させてから、COBにquoteを入れる。
だからスプレッド全体のbidは個別legより遅れてまともになる。
AEGISでの実例 (2026-03-26 オープン直後)¶
Saxo Native multileg quote — BE (Put Credit Spread):
bid = -1.55 ← 「今はこのスプレッド買いたくない」
ask = 3.65 ← 「売ってもいいけど超高いよ」
mid = 1.05 ← 真ん中(本来の価値に近い)
PriceType = Indicative(参考値)
AEGISの判定:
「bid=-1.55?クレジットがマイナス → BROKER_NET_CREDIT_NON_POSITIVE → 却下」
これは正常動作。壊れているわけではなく、朝の準備中。10:00 ET頃にbidが正の値に収束し、エントリー条件を満たし始める。
Saxo Bankの位置づけ¶
Saxoはリテールブローカーなので、取引所COBに直接アクセスするのではなく流動性プロバイダ経由。multileg quoteはプロバイダのaggregation結果であり、Indicativeフラグは「プロバイダがまだfirmな価格を出していない」ことを意味する。
2026-03-26 — LT_RC初日の観察に基づく