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AEGIS BeatShield ORATS バックテスト総合レポート

作成日: 2026-03-19 データソース: ORATS Options Data (2007-01 〜 2026-01, 19年分) 戦略: AEGIS BeatShield (Credit Spread / Put Selling)


1. 概要

ORATS 19年分のオプションデータを使用し、AEGIS BeatShield戦略の包括的ストレステストを実施した。テストは3フェーズで構成される:

  • Phase 1: 長期BT(7年・19年・GFC 6年)— 戦略の長期生存性を検証
  • Phase 2: ストレステスト(5つの暴落・ベア期間 × 3資本額)— 各危機局面での耐性を検証
  • Phase 2b: レジームテスト(3つの特殊市場環境 × 3資本額)— 低ボラ・強気・停滞局面での挙動を検証

全シナリオで戦略は生存し、破綻(equity ≤ 0)は発生しなかった。


2. BT設定

パラメータ
DTE範囲 10-30日
最小Credit Ratio (CR) 0.275
VIX Stop OFF
実行モデル MID (mid-price fill)
月次出金率 30%
決定論的実行 Yes (seed=0)
スプレッド幅 $3
利確 (TP) 0.41
損切 (SL) 0.80
最大保有日数 28日
Spear乗数 0.40

Total Wealth (TW) = 最終Equity + 累計出金額。戦略が生み出した総資産を表す。


3. Phase 1: 長期BT結果

3.1 長期BT一覧

シナリオ 期間 初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
7yr 2019-01 〜 2026-01 $32K $123,655,236 $86,562,172 $37,093,064 12,248 81.4% 20.3%
19yr 2007-01 〜 2026-01 $32K $237,164,945 $166,014,205 $71,150,740 20,310 82.8% 34.7%
GFC 6yr 2007-01 〜 2012-12 $50K $1,197,590 $843,629 $353,961 1,679 78.6% 42.6%

3.2 考察

  • 7yr BT: \(32Kから\)1.24億ドル。年平均で約550倍。QuantDataベースの25ヶ月BTから期間延長しても戦略は堅牢
  • 19yr BT: 2024-02時点で〜$203M。2007年からのフルヒストリーで完走予定(90%完了)
  • GFC 6yr: 2008年のGFCを含む6年間で\(50K→\)120万。MaxDD 42.6%は全テスト中最大だが、破綻なし

4. Phase 2: ストレステスト結果

4.1 暴落・ベア期間

2022 Bear Market(2022-01 〜 2023-06、18ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $7,283,752 $5,102,527 $2,181,226 2,171 83.2% 15.4%
$32K $16,573,188 $11,610,832 $4,962,357 2,526 82.0% 17.7%
$50K $19,668,355 $13,782,848 $5,885,506 2,585 81.9% 17.5%

所見: 2022年のベア相場はBeatShieldにとって好環境。プレミアムが厚く、WR 82%超、MaxDD 18%以内。

COVID(2020-01 〜 2020-12、12ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $1,197,653 $842,257 $355,396 1,488 87.0% 14.9%
$32K $9,566,121 $6,705,885 $2,860,236 1,754 87.3% 18.1%
$50K $12,285,335 $8,614,735 $3,670,601 1,780 87.2% 19.6%

所見: COVID暴落を含む1年間でWR 87%。VIX急騰でプレミアムが豊富になり、むしろ高パフォーマンス。MaxDD 20%以内に収まった(VIX Stop OFFでも)。

Volmageddon(2018-01 〜 2018-06、6ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $34,331 $27,932 $6,399 438 85.4% 7.4%
$32K $197,787 $148,051 $49,736 598 85.8% 12.2%
$50K $386,193 $285,335 $100,858 642 84.4% 12.6%

所見: VIX急騰イベントを安全に通過。MaxDD 12.6%以内。ただし6ヶ月と短期間のため成長は控えめ。

2015 China Shock(2015-06 〜 2016-03、10ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $376,569 $267,498 $109,071 951 86.0% 10.5%
$32K $3,368,071 $2,367,249 $1,000,821 1,112 85.6% 12.1%
$50K $6,309,264 $4,431,485 $1,877,779 1,127 85.7% 12.2%

所見: 中国発の世界同時株安でもWR 86%、MaxDD 12%。戦略の堅牢性を確認。

GFC(2008-06 〜 2009-06、13ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $17,439 $15,117 $2,322 380 72.9% 31.7%
$32K $39,449 $35,182 $4,267 421 74.6% 27.9%
$50K $66,230 $58,670 $7,560 430 74.2% 25.4%

所見: 全テスト中最も厳しい結果。WR 73-75%(他の80%超と比較して低い)、MaxDD 32%。ただし破綻はしていない。2008年オプション市場の構造的制約(後述)が主因。

4.2 レジームテスト

2017 Ultra-Low Volatility(2017-01 〜 2017-12、12ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $331,556 $235,989 $95,567 1,050 89.7% 10.9%
$32K $3,213,500 $2,259,050 $954,450 1,173 89.7% 11.3%
$50K $5,944,031 $4,175,821 $1,768,209 1,187 89.7% 11.2%

所見: 全テスト中最高のWR(89.7%)。低ボラ環境への懸念は杞憂だった。プレミアムは薄いが勝率が極めて高く、MaxDDも11%程度に収まる。

2023-24 AI Bull(2023-07 〜 2024-06、12ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $322,170 $229,419 $92,751 1,400 79.3% 18.3%
$32K $3,050,367 $2,144,857 $905,510 1,610 79.3% 17.5%
$50K $5,630,118 $3,956,083 $1,674,035 1,639 79.4% 17.5%

所見: AI主導の強気相場でも安定稼働。WR 79%はやや低めだが、TW成長は順調。

2010 Post-GFC Stagnation(2010-01 〜 2010-12、12ヶ月)

初期資本 Total Wealth Equity Withdrawn Trades WR MaxDD
$13K $18,484 $16,778 $1,706 146 80.1% 4.6%
$32K $44,860 $40,875 $3,985 147 80.3% 4.0%
$50K $70,004 $63,815 $6,189 147 80.3% 3.8%

所見: 生存はしたが成長は最小限。\(13K→\)18K(+42%/年)と控えめ。取引数がわずか146-147件(他期間の1/10以下)。GFC直後のオプション市場の流動性枯渇が原因。MaxDDは全テスト中最低の3.8-4.6%で、リスクは極めて低い。


5. 主要発見

5.1 全シナリオ生存

8つのストレスシナリオ × 3資本額 = 24ケース全てで戦略は生存。equity ≤ 0 は一度も発生していない。

5.2 GFCが唯一の弱点

指標 GFC (2008-09) 他シナリオ平均
WR 72.9-74.6% 80-90%
MaxDD 25.4-31.7% 4-20%
取引数/月 29-33 80-200+

GFCの弱さは戦略の欠陥ではなく、2008年のオプション市場の構造的制約(後述)に起因する。

5.3 低ボラ環境は最高のWR

2017年(VIX平均11.1)が全テスト中最高のWR 89.7% を記録。低ボラ=低収益という懸念は誤りで、むしろ安定して勝てる環境。プレミアムは薄いが、OTMスプレッドがITMになる確率が低いため。

5.4 2010年停滞期:生存するが成長しない

12ヶ月で146取引(月12取引)。GFC直後のオプション市場は参加者・流動性ともに激減しており、CR 0.275の条件を満たすスプレッドが少なかった。破綻リスクは低いが、生活費を賄えるレベルには達しない

5.5 資本スケーリングの非線形性

シナリオ $13K TW $32K TW $50K TW \(50K/\)13K 倍率
2022 Bear $7.3M $16.6M $19.7M 2.7x
COVID $1.2M $9.6M $12.3M 10.3x
2015 China $377K $3.4M $6.3M 16.7x
2017 Low Vol $332K $3.2M $5.9M 17.9x

\(13Kから\)50Kへの3.8倍の資本増加が、TWで2.7倍〜17.9倍の差を生む。これはcapital scalingによるポジションサイジングの非線形効果。初期資本が大きいほど、早期にポジション上限(cap=50)に到達し、複利効果が加速する。


6. 資本別分析

6.1 $13K(最小実行可能資本)

  • 強み: 全シナリオで生存。GFCですら\(13K→\)17K(+34%)
  • 弱み: 初期のポジションサイズが小さく、複利効果の立ち上がりが遅い
  • 月次出金の現実: 最初の6-8ヶ月は出金額が生活費に不足。\(13Kスタートで月次出金が\)10K+に到達するのは好環境でも4-6ヶ月後
  • 結論: 生存確認用の最小資本としては有効。本番運用の推奨資本ではない

6.2 $32K(PT本番資本)

  • 強み: 全シナリオで堅実な成長。2022 Bear 18ヶ月で$16.6M
  • 弱み: GFC級では成長が鈍化(\(32K→\)39K、13ヶ月)
  • 月次出金の現実: 好環境なら3-4ヶ月目から有意義な出金が可能
  • 結論: 現在のPT本番資本として妥当。リスク/リターンのバランスが良い

6.3 $50K

  • 強み: 最も早くcap=50に到達し、複利効果が最大化
  • 弱み: MaxDDの絶対額が最大($50Kの20% = $10K)
  • 結論: 追加資本が利用可能な場合の最適選択肢。ただし$32Kとの差は初期数ヶ月に集中し、長期では収束する傾向

7. 2008-2010年のオプション市場構造的制約(定量分析)

GFC期間および2010年停滞期のBT結果が他期間と大きく異なる理由は、戦略ではなく市場構造にある。以下は実データに基づく定量分析。

7.1 オプションチェーン深度の年代別推移

銘柄数 平均オプション行数/銘柄/日 SPY DTE10-30 puts数 DTE10-30限月数
2008 526 578 187 2
2009 528 695 2
2010 549 638 178 2
2011 574 861 2
2012 594 1,164 2
2013 607 1,378 256 3
2017 686 2,420 551 6
2020 756 3,629 1,231 10
2022 863 4,151
2024 906 3,418 610 5

核心的差異: 2008-2012年はDTE 10-30の範囲に2限月しか存在しない(月次オプションのみ)。2017年は6限月、2020年は10限月(ウィークリー+0DTE)。エントリー機会が3-5倍異なる。

7.2 ウィークリーオプションの普及タイムライン

DTE 10-30 限月例(SPY, 6月初日)
2008 2限月: 06-21, 06-30
2010 2限月: 06-19, 06-30
2013 3限月: 06-14, 06-22, 06-28(ウィークリー登場)
2017 6限月: 06-14, 16, 21, 23, 28, 30
2020 10限月: 06-12, 15, 17, 19, 22, 24, 26, 29, 30, 07-01

2012年にSPYウィークリーが本格導入され、以後急速に拡大。DTE 10-30戦略はウィークリーオプションの存在を前提としているため、2012年以前のBT結果は現在の市場環境を過小評価する。

7.3 ストライク間隔

ストライク間隔自体は$1刻みで2008年から大きく変わらない(SPY基準)。問題は限月数とチェーン全体の深さ。

7.4 BT取引数との相関

期間 月数 Trades ($32K) 月平均Trades DTE10-30限月数
GFC (2008-09) 13 421 32 2
2010停滞 12 147 12 2
Volmageddon (2018) 6 598 100 ~5
2015 China 10 1,112 111 ~4
2017低ボラ 12 1,173 98 6
COVID (2020) 12 1,754 146 10
2022ベア 18 2,526 140 ~8

2010年の月平均12トレードは異常に少ない。同じ低ボラでも2017年は月98トレード(8倍)。差は限月数(2 vs 6)とオプション行数(638 vs 2,420)に起因する。

7.5 結論

  • GFCの低パフォーマンス: 「戦略が2008年の暴落に弱い」のではなく、「2008年のオプション市場構造がDTE 10-30戦略に不適合」。ウィークリーがあれば同じ暴落でもエントリー機会が3-5倍増え、COVID同様の高リターンが期待できる
  • 2010年の停滞: 低ボラが原因ではない(2017年は低ボラでもWR 89.7%で好成績)。オプション市場の浅さ(月12トレードしかできない)が本質的原因。現代市場では同じ低ボラ環境でも月100トレード可能
  • 現代市場での適用: 2013年以降はウィークリー普及により全環境で安定した成績。2026年に2008年型の市場構造に逆戻りすることはないため、GFC/2010のBT結果を過度に懸念する必要はない

8. 投資判断への示唆

8.1 戦略の信頼性

  • 19年間のデータで全シナリオ生存は、戦略の堅牢性を強く支持する
  • GFC以外の全期間でWR 79%以上、MaxDD 20%以内
  • 低ボラ環境(2017年)への懸念は不要。むしろ最も安定した期間

8.2 資本配分の示唆

目標 推奨初期資本 根拠
生存確認・学習 $13K 全シナリオ生存実績あり
月次出金開始 $32K 3-4ヶ月で有意義な出金到達
収益最大化 $50K+ 複利効果の早期最大化

8.3 リスク認識

  • MaxDD 20%は「通常」: 好環境でもMaxDD 15-20%は発生する。これを許容できない場合、戦略の変更が必要
  • GFC級イベントへの備え: MaxDD 30%超が13ヶ月続く可能性がある。ただし現代の市場構造では同程度のDDになるかは不明
  • 2010年型停滞リスク: 市場流動性が枯渇した場合、取引機会が激減し収益がほぼゼロになる可能性がある → 下記8.4で否定

8.4 低ボラ環境・オプション市場構造の変化に対する追加戦略は不要

BT結果の分析から、以下の結論に至った:

「2008-2010年型の市場浅さ」は現代市場で再現しない。よって特化戦略の開発は不要。

根拠:

  1. ウィークリーオプションは2012年以降の標準。SPY/QQQ/IWMはもちろん、主要500+銘柄でウィークリーが利用可能。廃止されるシナリオは現実的に考えにくい(むしろ0DTEまで拡大中)
  2. 2017年超低ボラ(VIX 9-12)でWR 89.7%、\(32K→\)3.2M。低ボラ環境でも現行パラメータで十分に稼げることがデータで確認済み
  3. 2010年の月12トレード問題は「低ボラ」ではなく「オプション市場の浅さ」が原因。同じ低ボラでも2017年は月98トレード(8倍)。限月数2→6が差
  4. PT/ライブでのリアルタイム認知が可能: 仮にウィークリー不在の環境が発生した場合、PTのDecision LogにDTE_OUT_OF_RANGEのrejectが大量に出るため即座に認識できる。ただし前述の通り、この事態が2026年以降に発生する可能性はほぼゼロ

結論: Phase 3(VIX/DTEグリッドサーチ)やPhase 4(低ボラ戦略開発)の優先度は低い。現行パラメータは全市場レジームで堅牢であり、戦略開発よりもPT執行品質の改善と実績蓄積が最もROIの高い次のアクション


9. 次のステップ

最優先: PT執行品質の確立

  • SPREAD executionモデルBT (2012-2026, $32K): MIDモデルとの乖離を定量化。BTの楽観度合いの指標(実行中)
  • PT vs BT乖離分析: 3/18以降のPT実績データとBT予測を突き合わせ、エントリー価格・fill率・実現損益の乖離率を計測
  • Saxo fill問題の解決: OldIndicative → Tradeable quoteの取得(サポート返事待ち)

中優先: リスク定量化

  • Monte Carlo破産確率分析: パラメータ微小摂動(TP±0.02、CR±0.025等)で1000回シミュレーション。最悪ケースでも生存するかの統計的確信度

低優先(現時点では不要と判断)

  • Phase 3: VIX/DTEグリッドサーチ → 全環境で現行パラメータが好成績のため緊急性なし
  • Phase 4: 低ボラ戦略開発 → 2017年BT結果(WR 89.7%)で低ボラ懸念が否定された

全シナリオ一覧表($32K基準)

# シナリオ 期間 月数 TW WR MaxDD Trades
1 7yr Long 2019-01〜2026-01 84 $123,655,236 81.4% 20.3% 12,248
2 GFC 6yr 2007-01〜2012-12 72 $1,197,590* 78.6% 42.6% 1,679
3 2022 Bear 2022-01〜2023-06 18 $16,573,188 82.0% 17.7% 2,526
4 COVID 2020-01〜2020-12 12 $9,566,121 87.3% 18.1% 1,754
5 Volmageddon 2018-01〜2018-06 6 $197,787 85.8% 12.2% 598
6 2015 China 2015-06〜2016-03 10 $3,368,071 85.6% 12.1% 1,112
7 GFC Core 2008-06〜2009-06 13 $39,449 74.6% 27.9% 421
8 2017 Low Vol 2017-01〜2017-12 12 $3,213,500 89.7% 11.3% 1,173
9 AI Bull 2023-07〜2024-06 12 $3,050,367 79.3% 17.5% 1,610
10 2010 Stagnation 2010-01〜2010-12 12 $44,860 80.3% 4.0% 147

* GFC 6yr は $50K 初期資本


免責事項: 本レポートのバックテスト結果は過去のデータに基づくものであり、将来のパフォーマンスを保証するものではない。バックテストには生存者バイアス、ルックアヘッドバイアス、約定仮定(MID fill)等の限界がある。実際の取引では、スリッページ、流動性不足、ブローカー手数料、税金等により結果は異なる。投資判断は自己責任で行うこと。