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スリッページ検証戦略 — SIM環境の限界と段階的アプローチ

作成日: 2026-03-20 対象: AEGIS BeatShield Paper Trading (Saxo SIM / Live API) 関連: PT成績の解釈ガイド


1. 背景 — なぜスリッページ検証が重要か

AEGISのBT/PTにおける収益性は「約定価格の妥当性」に直結する。クレジットスプレッドでは、エントリー時に受け取るクレジットとイグジット時に支払うデビットの差が利益そのものであり、各約定で$0.01-0.05のズレが積み重なれば年間リターンに大きく影響する。

結論

  • 真のスリッページは実資金取引でしか100%確認できない
  • しかし ライブ口座APIで価格のみ取得する手法 により、実資金リスクなしで大部分の検証が可能になった
  • 段階的に精度を上げるアプローチが現実的

2. 現状の課題

2.1 Saxo SIMの制約

Saxo SIM環境ではオプションquoteが OldIndicative(15分遅延の参考価格)で返される。この制約により:

項目 影響
リアルタイム価格取得 ❌ 不可(15分遅延)
LIMIT注文の約定テスト ❌ 注文が滞留してフィルされない
bid/askスプレッドの実態把握 ❌ 遅延価格では市場流動性を反映しない
マルチレッグ注文のネット価格検証 ❌ 個別leg・ネイティブquoteともにOldIndicative

Saxoサポートへの問い合わせ: SAX-7150683(2026-03-19起票、回答待ち)

2.2 現行PTの対応 — 内部フィルモード

SIMでのフィル不能を回避するため、PTは内部フィルシミュレータで運用中:

# pt_xw.yaml 現行設定
use_internal_fill_execution: true
internal_fill_price_step: 0.05      # $0.05刻みに丸め
internal_fill_entry_price_offset: 0.02  # エントリーを$0.02不利に
internal_fill_exit_price_offset: 0.02   # イグジットを$0.02不利に
  • エントリー: (MID - $0.02) を floor → 受取クレジットが減る(保守的)
  • イグジット: (MID + $0.02) を ceil → 支払デビットが増える(保守的)

3. ブレイクスルー — ライブ口座APIでの価格取得(2026-03-20)

3.1 手法の概要

ライブ口座のAPIを叩いて価格だけ取得し、注文は出さないという手法を発見。

  • ライブ口座APIはリアルタイムの Tradeable 価格を返す
  • SIM口座の OldIndicative 問題を完全に回避
  • 注文を出さないため資金リスクはゼロ
  • PT実行中にライブ口座の価格をリファレンスとして記録できる

3.2 この手法で検証できること

検証項目 可能性 具体的に分かること
リアルタイムbid/askスプレッド 銘柄・DTE・時間帯ごとのスプレッド幅の実態
内部フィルoffsetの妥当性 $0.02 offsetが保守的すぎるか甘いかの判定
MID価格の精度 PT内部のMID計算と実市場MIDの乖離
マルチレッグのネット価格 個別leg積算 vs ネイティブmultileg quoteの差
流動性パターン 時間帯(寄付/引け付近)での変動

3.3 この手法では確認できないこと

検証項目 理由
マーケットインパクト 実際の注文による価格変動は観測できない
約定速度 LIMIT注文のフィルまでの所要時間
部分約定リスク マルチレッグの片方だけフィルされるケース
キュー位置の影響 同価格帯の注文量は不明
大ロット時のスリッページ増大 50枚同時等の大口注文のインパクト

4. 検証の段階的アプローチ

graph LR
    A["Stage 1<br/>内部フィル<br/>($0.02 offset)"] --> B["Stage 2<br/>ライブAPI価格検証<br/>(offset妥当性判定)"]
    B --> C["Stage 3<br/>少額実資金<br/>(1-2枚で真のフィル確認)"]
    C --> D["Stage 4<br/>本格実運用<br/>(検証済みoffset適用)"]

    style A fill:#e8e8e8,color:#333
    style B fill:#4a90d9,color:#fff
    style C fill:#d9534f,color:#fff
    style D fill:#5cb85c,color:#fff
Stage 手法 確認できる精度 状態
1 SIM + 内部フィル($0.02 offset) 保守的な近似値 ✅ 運用中
2 ライブAPI価格でPT内部フィルを検証 bid/askスプレッド実態 🔧 実装予定
3 少額実資金で小ロット(1-2枚)実行 真のスリッページ ⏳ 免責後
4 検証済みパラメータで本格運用 実績ベース ⏳ Stage 3後

5. $0.02 offsetの妥当性についての予備考察

XWクレジットスプレッドの典型的なパラメータ:

  • スプレッド幅: $3
  • CRフィルタ: ≥ 0.275(最低クレジット $0.825)
  • 典型的なクレジット: $0.90 〜 $1.20

bid/askスプレッドが\(0.05-0.10程度であれば、\)0.02 offsetは概ね妥当な保守値。ただしこれはStage 2のライブAPI検証で実測すべき仮定である。

offsetが不十分なケース

  • 流動性の低い銘柄(小型株オプション): スプレッド$0.15-0.30の可能性
  • 引け間際(15:45-16:00 ET): スプレッド拡大傾向
  • VIX急騰時: 全体的にスプレッド拡大

6. 今後のTodo

Stage 2 実装タスク(ライブAPI価格検証)

  • ライブ口座APIからのリアルタイムquote取得をPTログに記録する機能追加
  • PT約定時に「内部フィル価格 vs ライブbid/ask」の乖離をログ出力
  • 1-2週間分のデータ蓄積後、offset妥当性を統計的に分析
  • 分析結果に基づき internal_fill_entry/exit_price_offset の調整

Stage 3 準備タスク(少額実資金検証)

  • 免責確定後、ライブ口座に少額入金($5K程度)
  • 1-2枚の小ロットで実際のLIMIT注文フィルを確認
  • 内部フィル vs 実フィルの乖離を統計的に比較
  • マルチレッグの同時約定率・部分約定頻度を測定

長期的な改善

  • Saxoサポートからの回答(SAX-7150683)を踏まえたSIM環境改善
  • スリッページモデルの銘柄/DTE/VIX別の動的調整
  • 大ロット時のマーケットインパクトモデル検討(資本$1M超時)