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XW 危機耐性アーキテクチャ

19年BT: COVIDを増益で通過($74M → $80M)

XWは明示的なベアフィルタだけでなく、戦略構造そのものに危機耐性が内蔵されている。 これらのメカニズムは個別に設計されたものではなく、クレジットスプレッド売り戦略の構造的特性として自然に発現する。


概要: 6層の危機防御

XWの危機耐性は2つのカテゴリに分類される:

明示的フィルタ(意図的に設計)

外部シグナルに基づいてエントリー/エグジットを制御する。詳細は Bear Market Filters を参照。

# メカニズム トリガー 動作
1 VIX Stop 30 VIX ≥ 30 全ポジション強制クローズ + 新規ブロック
2 GFF Mode B 5d GEX bearish flip 5日間エントリーブロック
3 HY OAS Gate + Momentum Direction HY OAS ≥ 400bps 下落銘柄でCall Credit Spread(弱気ベット)に切替

構造的危機耐性(Structural Crisis Resilience)

戦略のパラメータ設計から自然に発現する特性。明示的なフィルタとは異なり、ON/OFFスイッチがなく、常時作用している。

# メカニズム なぜ危機時に有利か
4 CR≥0.275 プレミアムゲート 高VIX → CR条件を満たすスプレッドが急増 → エントリー増加 → プレミアム収入増
5 短期DTE 自然消滅 暴落前にポジションが満期消滅 → 長期保有リスクなし
6 Capital Scaling 利益収穫 高equity時にqty=200+で大量ポジション → 危機前の増益局面で利益を最大化

明示的フィルタの階層構造

graph TD
    A[市場データ受信] --> B{VIX ≥ 30?}
    B -->|YES| C[全ポジション強制クローズ<br/>新規エントリーブロック]
    B -->|NO| D{GEX bearish flip<br/>直近5日以内?}
    D -->|YES| E[エントリーブロック<br/>5日間クールダウン]
    D -->|NO| F{HY OAS ≥ 400bps?}
    F -->|YES| G[Momentum Direction判定]
    G -->|銘柄20日リターン < -5%| H[Call Credit Spread<br/>下落から利益]
    G -->|銘柄20日リターン > 0%| I[Put Credit Spread<br/>通常運用]
    F -->|NO| I

    style C fill:#e74c3c,color:#fff
    style E fill:#f39c12,color:#fff
    style H fill:#3498db,color:#fff
    style I fill:#2ecc71,color:#fff

各フィルタの詳細な検証データ・設定値は Bear Market Filters を参照。


構造的危機耐性の詳細

CR≥0.275 プレミアムゲート

クレジットスプレッド売り戦略の最も重要な構造的特性: 高VIX環境でプレミアムが本質的に有利になる

メカニズム:

  1. VIX急騰 → オプションプレミアム(IV)が全面上昇
  2. CR(Credit Ratio = 受取プレミアム / スプレッド幅)が上昇
  3. CR≥0.275 を満たすスプレッドが大量発生(通常時は少数)
  4. エントリー機会が増加 → プレミアム収入が増加

通常時 vs 危機時:

環境 VIX CR≥0.275を満たすスプレッド エントリー
低ボラ (VIX 12-15) 少数(高品質のみ) 限定的
通常 (VIX 15-25) 適度 通常ペース
危機前兆 (VIX 25-30) 大量 加速

CRフィルタの二面性

CR≥0.275は品質フィルタとして設計されたが、結果的にベア市場で自動的に「攻撃モード」に入る構造を生む。 高VIXでプレミアムが膨らむほど、CRフィルタを通過するスプレッドが増え、戦略がより積極的にプレミアムを収穫する。

逆に低VIX停滞期(2010年、2017年型)では、CR条件を満たすスプレッドが減少し、エントリーが自然に抑制される。 これは「低ボラ期に過剰なリスクテイクを防ぐ」という副次的な防御効果も持つ。

関連: XW_CR25_M98 — CRスイープ分析


短期DTE 自然消滅(DTE 10-30)

短い残存期間のスプレッドは、暴落が深刻化する前にシータ減衰で自然消滅する。

メカニズム:

  1. DTE 10-30のスプレッドは最長でも30日で満期
  2. 暴落は通常、数週間〜数ヶ月にわたって進行
  3. 暴落初期のポジションは満期で自然決済 → 損失が限定的
  4. VIX Stop 30が発動するまでの「つなぎ」として機能

DTE長短による危機影響の違い:

DTE範囲 7年BT Worst Month COVID期間のリスク
10-30 (採用) -25.1% 短期で満期消滅、長期保有リスクなし
20-35 (旧) -43.0% 一部ポジションが暴落期間中に残存
30-60 -36.9% 長期ポジションが暴落を直撃

短DTE + VIX Stop の相乗効果

VIX Stop 30が発動すると新規エントリーがブロックされる。 既存ポジションはDTE 10-30のため、VIX Stop発動後最長30日で全ポジションが自然消滅。 長DTE戦略ではVIX Stop発動後も60-90日間ポジションが残り続けるリスクがある。

関連: XW_CR25_DTE10-30 — DTE範囲スイープ


Capital Scaling 利益収穫

APASv3のCapital-Aware Scalingにより、equity増大時にポジション数が自動拡大し、危機前の好調期で利益を最大化する。

メカニズム:

max_positions = min(30 × equity / capital_scaling_base, cap)

例: $32K base, cap=50
  equity $32K  → 30 positions
  equity $53K+ → 50 positions (cap到達)
  equity $74M  → qty=200+ per position (contract scaling)

危機との関係:

  1. 危機前(equity成長期): 資本が増えるにつれポジション数・コントラクト数が拡大
  2. 大量のポジションで高VIX期のプレミアムを効率的に収穫
  3. 19年BTのCOVID期: equity $74Mでqty=200+が稼働 → 大量ポジションで利益を刈り取り
  4. 危機後(equity減少時): ポジション数が自動縮小 → リスクエクスポージャーが自然に減少

Capital Scaling の非線形効果

19年BTでCOVID期間中に増益($74M → \(80M)した主因は、\)74M規模でのqty=200+という巨大なポジション数。 $32K開始の25ヶ月BTでは同じ効果は発現しない(スケールが小さいため)。 長期複利運用でのみ発現する構造的優位性。

関連: 2階建てアーキテクチャ — Capital Scaling


実証: 19年BT COVID通過

期間 Equity推移 主要防御メカニズム
2020-01〜02 (危機前兆) $74M → 成長継続 CR≥0.275が高VIXプレミアムを収穫、Capital Scalingでqty最大化
2020-03 (暴落) VIX=82到達 VIX Stop 30で強制クローズ、短DTEポジションは自然消滅
2020-04〜 (回復) $80M〜 VIX低下でエントリー再開、CRフィルタが回復期の高プレミアムを捕捉

VIX Stop 30 がなければ全損

構造的危機耐性だけでは不十分。VIX=80(事実上無効化)では2020-03にequityが-$7,602まで暴落し全損。 構造的メカニズムは「危機前後で利益を最大化」し、VIX Stopは「危機のピークで資本を保全」する。 両者の組み合わせが不可欠。


Phase 3-4: 進化の方向性

現在進行中 — ORATS 19年データBTによる検証

Phase 3-4のBT(GFC 2008、2022ベア等の危機期間テスト)により、 これらのメカニズムの有効性がさらに検証・進化する見込み。

現在のメカニズムは2024-2026の25ヶ月BTとQuantDataベースの7年BTで検証済みだが、以下の課題が残っている:

課題 期待される進化
GFC (2008) での検証 ORATS 19年BTで2008年金融危機を通過できるか確認
低VIX長期停滞 (2010-2017) CRフィルタの「エントリー抑制」効果が長期低ボラで機能するか
VIX Stop 閾値の最適化 より多くの危機データでVIX=30の妥当性を再検証
DTE範囲の精緻化 ORATS bid/askデータで短DTEの実運用品質を確認

Phase 3-4の結果は本ページに追記予定。


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